「ふさすぐり」は、宮城県栗原市の花山地域で栽培されている、さわやかな酸味が特徴の果実です。西洋名は「レッドカーラント」と呼ばれ、西ヨーロッパが原産。その名の通り艶があり真っ赤な色をしていることから、ジャムや果実酒、ケーキのデコレーション食材として利用されています。
花山地域では、昭和50年代から“地域起こし”として栽培が始まりました。ところが現在は少数の生産者が栽培しているだけ。農産物としての栽培実績も宮城県内では花山地域のみ。過疎化や高齢化などにより担い手の不足が課題になっていたのです。
そこで私は「栗原の農産物をなくすのはもったいない!」との強い想いから、パレットとして収穫作業をお手伝いすることにしました。
一般にケーキづくりの材料は、市販ルートを通じて仕入れることがほとんどです。このため「ふさすぐり」がどのようにつくられているか知らないスタッフが多いようです。しかし、それでは菓子づくりのプロとして本当に納得できるものはつくれません。まずは栽培されている生産者さんの現場を知ること。すると、これまで見えなかったことが見えてくるはずです。
朝9時に花山現地で収穫作業を開始。枝に実った果実をはさみで丁寧に切り取ります。ほとんどのスタッフは、畑で栽培されている「ふさすぐり」を実際に見るのは初めてで、その艶やかさに驚いていました。また、実が柔らかく繊細なため、手で採るとつぶしてしまう心配があると感じたようです。
収穫後、選別・洗浄し、傷まないよう、すぐに冷凍処理します。手間がかかりますが、生の「ふさすぐり」を使ったケーキやジャムの味わいは格別。7月下旬に期間限定商品として店頭に並びました。
収穫作業への参加は、昨年に続き今年で2回目。市販の海外産と比べると、花山の「ふさすぐり」は、味も風味もぜんぜん違います。やはり自分で収穫したものは、とても美味しく感じます。そのことをお客さまにも感じてもらえるとうれしいですね。
収穫の際、初めて見た生の「ふさすぐり」は、艶があってひとつひとつの果実がとてもしっかりしてました。さらに果実を選別し、きれいに洗浄し、すぐに冷凍するなど、新鮮な状態でお客さまにお出しするまでが大変。ケーキに飾るときも生産者さんの気持ちが伝わるよう心がけました。
パレットのパンとお菓子は、地元栗原の食材を使うことを心がけています。それはケーキの飾りに欠かせない「ふさすぐり」も同じです。まずはブルーベリーやイチゴのようにケーキやヨーグルト、ムースに添えてみてください。ほら! 見た目にも赤い色が際立って素敵なアクセントになりますね。
また「ふさすぐり」の果実にはアプリコットやイチゴよりも多くのペクチンが含まれているため、ジャムをつくるのに適しています。さらに、酸味を活かしてジュースやソフトクリームにするのもおすすめ。ビタミンCも豊富なので、夏の暑さや紫外線対策としても有効ですよ。